『文品-藤沢周平への旅』に思う
<読書>『文品-藤沢周平への旅』後藤正治 中央公論新社 2025 を読み終えた。『文品』とは的を射た名題。ボケ爺は学生時代の大学革命闘争に参加していた時に読んだ「野間宏『暗い絵』」を読んで気に入り作品のほとんどを読んだ思い出がある。引く続き「藤沢周平」の『暗殺の年輪』『闇の歯車』『暁の光』の暗さに魅かれて、全作品の半分は読んだ。藤沢周平の作品には「こころ(人情)」がしみ込んでいる、と思っている。
今著(後藤正治は作家だ)はその作家の目を通して一種の小説のような仕上がり。周平は自作品についてエッセイを書く。批評にも答えている。その(批評)は市井の人情も、上下族の友情も、悪を戒める熱情も、周平のエッセイの中にも表れる。
著者はそのエッセイも読み込み、巧みな構想の道しるべとして活用。周平の良さ(長い年月の遍歴)の引き出し方が素晴らしい評論? 否、作家として第三者の解説をも借用した筋立てがしびれるノンフィクションのような作品に仕上がっている。これこそ「文品」と呻ってしまう。それに藤沢周平がよみがえった。 ボケ爺の「残日録」を書き残したいが文才がない。
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