方丈庵記(読書)
方丈庵での過ごし方に一向に改善が見られない。本来やるべきことがあるのだが、それには手が付かない。残念な毎日だ。だが読書は出来ている。
<読書> 「列」中村文則 講談社
誰もが、高度経済成長の流れに乗るために「列に並び人生のレール」に従う。ある列に何時から並べばいいか分からないが、その列の地面には「幸福であれ」と書かれている。列の前後の人物を観察すれば山ほどのケチや不安が募るが。第二章では、生物学者のサルの研究論文比較。二ホンサルの「自然な群れ」と、「動物園(人工)の習性」の違いを。チンパンジーも加えて「餌」と「セックス」の考察。カミュの『転落』からメス社会が平和だ、と。列から離れて「疎外個体」となる、とカフカの『変身』と対比し、各自には先行きの「整理券」の示唆がなされている。兎に角、難解なフィクションだ。
<読書> 「異人たちとの夏」 山田太一 新潮社
どこかで面白い、との解説からこの古い本を手にした。どんな脚本家?読み始めた。妻と息子と別れて4年が経つところかミステリーが始まる。異人とは、死亡した父、母との回想と思いながら、「こんなことだったのか!」と。両親との生活を想定。ボケ爺もそう言えば、親父、お袋とどんな話をしてきたのだろうと回想。親父やお袋は「僕のことを、どう思っていたのか?」。逆に親父と、お袋と「何を話していたのか?」をも思い出せない。これが親子の一生か?深く考えさせられる。
<読書> 「チッチと子」石田衣良 毎日新聞社
売れない小説家と息子の慎ましくも愛おしい日々。妻は本当に車の事故だったのか?自殺ではなかったのか?と事故で亡くした妻を忘れることが無い。妻の親、取り分け母上は再婚を進める。そんな中、息子の食事造り、選択掃除、と家庭を切り盛りしている。10年も続けている小説は、初版どまり。だが、直木賞にノミネート。賞には落ちたが評価は良かった。次の小説も引き続きノミネートされ賞を頂けた。妻が事故だったことが家族への感謝の遺書に心もスッキリ。息子が父(チッチ)が大好きで生意気な口答えをする。小説家、出版社仲間の支援もあり、思わずもらい泣きできる素敵な小説だった。
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