読書『本心』
『本心』平野啓一郎 文藝春秋 を読み終えた。筆者の作品は『マチネのおわり』『ある男』を読んだ、と言うよりは目を通した程度の読書であった。兎に角難しい。
しかし、今回その難しい読書に挑んだのは『本心』と言う表題に特に興味を持った。常に相手の心の本心を知りたいと思う。本著は「本心を知りたい、本心を言いたい」であり、中心のテーマは、「自由死(安楽死)」を望む母の本心は何処にあるのか?母は「十分に生きた」と言う理由での自由死を選んだ。現実は交通事故だったのだが
時代設定は2040年近辺だ。SFではない。今日のインターネット時代の進化した世界。SNSが進化して生成AI、AR、VRの仮想空間を駆使してのコミュニケーション時代を背景にしている。仮想空間ではアバターが中心。いろんな分野のアバターSWでビジネスが成り立つ。VF(バーチャル・フィギャ)や、リアルアバターも活動する。
主人公は死んだ母のVFの制作を依頼し、そのアバターとやり取りすることで、「母の本心」を知ろうと奮闘する。その間、いろんなアバターのいろんな出来事に遭遇する。社会の最も大きな課題は「こちらの世界(貧困)あちらの世界(富)」の格差社会(性差、民族、学歴、など)で起きる課題にも取り組む。アバターでの「犯罪(オレオレ詐欺)、殺人も起きる。冤罪事件、少子高齢化も課題問題、等が織り込まれて未来の社会の混乱が現実味を増す。
終盤は「ゲーム感覚で人生を過ごせるのか」「人は生活のためが中心で生きていくのか」「真実、本心で生きていけるのか」を問い詰めて終わる。解は無い。なかなか重い課題だ。疲れた。
きっと、アメリカ大統領選挙時のフェイクで混乱と同様な現象を先取りしている。
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