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2024年3月 9日 (土)

方丈庵記5:読書三昧

 方丈庵に移り4カ月を迎えるが、未だに新居には馴染まない。のんびりと気を落ち着かせたいのだが。鴨長明のような境地に、早くなりたい。読書三昧で過ごしてみた。

『本の栞にぶら下がる』斎藤真理子 岩波書店

「ぶら下がる」は「ぶら下がりて」の表題の方が、ぴたりだと思う。書評かと読み始めたら、読書感想その周辺の著書の紹介。幅広く興味を持ち読み漁る姿勢にまずは敬服。著者の深い思想を、絞り出す気概と、気力には感服。ボケ爺も、と思うが所詮浅学、無理は承知だ。いい本に会えて満足。

『風に立ち』柚月裕子 中央公論新社

著者の作品を読み始めたのは、警察モノのであった。その時の印象は、よく勉強している、であった。本著は少年補導委託を引き受けた町工場の親方とその家族、社員との関わりを通して成長する青年。絡み合う人間性、人格を個性豊かな構成にし、きめ細かな人情を描き切っている。さらに、親子、家族との理解の距離感も絶妙だ。新ジャンルに挑戦する作家だ。

『一夜 隠蔽捜査10』今野敏 新潮社

作家の誘拐が起きる。犯人の要求が無いまま暗礁に乗り上げたが、本人の自首で解決か?だが、被疑者はSNSで依頼された請負。依頼主は知らない、と。違う場所で、昔は作家の殺人。これらが関係した事件であった。今人気の作家と昔の作家の意見の行き違いだった。複雑そうで単純なサスペンス。

『眠れぬ真珠』石田衣良 新潮社

主人公は、女性版画家で、アラフォーで更年期を迎えている。少し年上の画廊店長と関係を持ていたが、17歳も若い映像関係の青年と恋愛に。生き詰まっていた版画の創造性のエキスを得る。真剣な恋愛は歳に無関係、と実感。店長と不倫の若い女性のトラブルに巻き込まれ、その女性の精神は病み自殺に至る。その時に悟る、「多くの傷を負い、適当にズルく、せこく、いい加減などが、生き抜くには必要だ、と。

『かさなりあう人へ』白石一文 祥伝社

実に複雑な絡み合いのストーリーだ。4~5組の夫婦と言うか家族たちの歴史が、それぞれの夫が先に亡くなり、その間の不倫で、家庭が崩壊する。それぞれがその後に掛け替えのない人生を歩む。それぞれの人生の営みが重なり合っているようであり、微妙に違っているようでもあり。複雑な構成になっている。愛あり、憎しみあり、忘却あり、一気に読ませる不思議さが。

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