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2019年6月23日 (日)

漱石コード

 ダビンチコードが数年前に騒がれたが、漱石にも作品にもたびたび漱石コードが見え隠れする。これが漱石の恐るべき創造力のすごさである。

その中でも「坊っちゃん」が最も色濃く出ている。一般に、坊っちゃんは、青春小説ともいわれている。だが、隠されたコードを読み取ると、何と風刺小説となる。

日本は、江戸(徳川時代)から明治維新へ歴史は動く。山嵐(堀田)が「会津出身」で佐幕派である。戊辰戦争で会津は敗れる。「敗れた江戸は過去の世界」「勝ちの明治維新は近代」との図式でもある。漱石の留学体験の、英国の産業革命から生まれる格差社会を輸入した日本近代化の危うさの実情を批判したかったために仕掛けられたコードの一つである。さらに、この小説の中には秘められた記号がある。

1)坊っちゃんの松山での宿泊先の山城屋の雅号は、山縣有朋陸軍大尉が金儲けをしていた時の悪徳の商社「山城屋」と同じ。

2)坊っちゃんらの散歩の途中で松が話題になる。山縣が京都に無隣菴を作り「松」2本を植え、「天皇の松」と、権力の象徴に利用した。

3)赤シャツの「マドンナ」は、山縣が囲っていた妾、芸者出身の「貞子」を指している。

つまるところ、校長の狸が「山縣」、図学の教師の野だいこが「桂」、教頭の赤シャツが「西園寺」、そのコードは、日露戦争の張本人たちへの批判が隠されていたのだ。

「坊っちゃん」は小説としてあまりにも凝り過ぎている。一種の失敗作か?それとも、漱石の創造力の豊かさを見せつけられたのか?だが、ボケ爺は漱石を愛す。

<読書>

「太宰治の辞書」北村薫 創元推理文庫

ダボハゼで本を読んでいると、良書に当たる、とはよく言ったものだ。久しぶりに感激した。①実に、文章が軽妙な文章。②実に、微に入り細に入り気が付くものだ。③実に、多読であり、記憶力が良い。など。ボケ爺は、文面から作者は男性だと思っていた。読み始めて、「軽妙な文章」は、女性でなくては展開できない(女性の井戸端会議的)、と確信した。すると、文中で、「私の婦人」と暴露する。なるほど、すべてが氷解、この作品は女性でなければ書けない、と。さらに得られたのは、「芥川、太宰の発想力の魅力」の発見である。

 

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